伝わる言葉を生み出すコピーライターのお話
3. 既成概念を覆し、意識を変える言葉を生み出す。
明快なコンセプトを単刀直入に表現した言葉には、パワーがあります。
極端ですが、先ほどの「ベンザエースを買ってください。」のように、
これを人気タレントが笑顔で語りかけると、受け手の心の真ん中にズバッと届きます。
まさに、コンセプト表現のストレート、ド直球の気持ちよさと言えます。
一方、表現における変化球はどうでしょうか。
例えば、「男の仕事」というコピー。これだけでは、特段のコンセプトは伝わりません。
でも、これもかなり昔に実際にあった広告ですが(サントリーオールドだったと思います)、
「男が仕事」というコピーではどうでしょうか。
「男」ということを、ここでは「職業」として捉えていることが伝わります。
ここで読み手は、男という性別(属性)の既成概念が覆され、首をグッと横に曲げられます。
この感覚が、コンセプト表現の変化球のおもしろさなのです。
以前、クルマのコピーで、おしゃれな感覚を追求したある女性向けのクルマに、
「彼女のセンスは、知性です。」
というコピーを書いたことがありました。これも、「センス」=感覚・感性が、彼女にとっては「知性」(知的な感覚?)なんだという、通常の概念をちょっと覆そうとしたものです。
世の中には、さまざまな既成概念があり、言葉や表現のちょっとした工夫で、
そこにある思い込みをスマートに裏切る新しい見方、考え方を伝えることができます。
それが、魅力ある既成概念を覆し、意識を変える言葉となるのです。
直球は潔くて気持ちいいけど、使えるのは限定的。
変化球は既成概念をさらっと裏切る感覚が魅力。